審判員のアナウンスとコール

『アナウンス』と『コール』「Out(アウト)」「Fault(フォルト)」などチェアアンパイアやラインアンパイアのジャッジを『コール』といい、チェアアンパイアのスコアアナウンスなどを『アナウンス』と区別します。

『アナウンス方法の変遷』スコアアナウンスも「絶対こうでなければダメ」というものはありません。 時代と共にアナウンス方法も変化しています。最近はできるだけ簡略化したアナウンスをする傾向にあります。
以前は、試合開始直前に「A to serve, Ready? Play!」というように、プレーヤーの準備ができているかどうか確認する意味から「Ready?」とアナウンスし、一呼吸おいてから「Play!」とアナウンスしていましたが、最近では、「Ready?」は略されるようになっています。

また、ゲーム終了後のアナウンスも以前は、「Game A, he win the First Game.」とアナウンスしていましたが、最近では、「Game A, First Game.」とアナウンスしています。
・・・「コートの友」発行(1972年)以前には、「Game won by A」などとアナウンスしていたような気もするのですが、手元にそれが記載されている資料を持ちあわせていません。

ゲームスコアのアナウンスも「5 games to 4」は「5-4」のように簡略化されています。しかし、いずれの場合も、以前なされていたアナウンスは”間違い”であり、最新のアナウンス方法でなければダメというものではありません。特に、私たちが参加する草テニス大会では、国際大会などでアナウンスされているようなものでなくても「両プレーヤーにゲームの進行状況が間違いなく伝わるものであればいい」という程度のものでもよいでしょう。

大学や実業団などの大会でも独自のアナウンス方法を採用している場合があります。できるだけ統一した方法でなされるのが好ましいのですが、それぞれの大会に応じたアナウンス方法に従った方がよいでしょう。
また、都道府県大会などの地域大会では、チーフオブアンパイアから指示された正規のアナウンス方法をマスターして大会に臨みましょう。

『セルフジャッジでのコールとスコアアナウンス』セルフジャッジの試合では、ネットより自分の側のボールの判定とコールは、そのプレーヤーが「直ちに」「大きな声」と「明確なハンドシグナル」を示して行うことになっています。そしてスコアアナウンスは、新しいポイント、新しいゲーム、新しいセットが始まる前に「サーバーがレシーバーに聞こえるように大きな声でスコアをアナウンスする」ことになっています。

サーバーのスコアアナウンスがよく聞き取れず、そのまま次のポイントに入り、ポイント終了後のアナウンスによって”スコアが違う”などとトラブルになることもあります。
例えば、きわどいボールをプレーヤーAが「Out」とプレーヤーBに背中向きでコールしたが、プレーヤーBには聞こえず、プレーヤーA(サーバー)のスコアアナウンスもよく聞き取れずに次のポイントに入った。前のポイントをプレーヤーAは、当然、自分が取ったとしてコールしたが、プレーヤーBには「Out」が聞き取れず、グッドボールで自分がポイントを取ったと勘違いした場合など。
よく聞き取れないときに「スコアアナウンスを確認するのはレシーバーの義務」でもあるのです。

また、「Out」「Fault」の判定は、「片方の手を大きく上へあげる」ことになっていますが、「Out」「Fault」の声が小さく、人差し指をボールの落下地点を指し示してアウト(フォルト)の判定をした場合、相手プレーヤーにグッドのハンドシグナルと勘違いされてしまいます。

ゲーム中のスコアアナウンスは、セルフジャッジの場合でも、サーバーサイドから「15-40」などと、アナウンスするのはチェアアンパイアのついている試合と同様ですが、ゲームスコアは、レシーバーがリードしているとき、サーバーサイドから「1-4」などとアナウンスする場合も多いようです。
「ゲームスコアはセルフジャッジの試合でもリードしているプレーヤーの数字を先にアナウンスすべきだ」という方もいるようですが、先にも触れましたように『絶対こうでなければダメ』というようなものではありません。リードしているプレーヤーからアナウンスする場合には、「4-1, B leads」などのようにリードしているプレーヤー名もアナウンスしなければなりません。

『アナウンスは英語でないといけない!?』国内大会の場合には、アナウンスのすべてを英語で行わなければならないということはありません。スコアアナウンスやコードバイオレーションなどを除いて、日本語でも不自然でなければ日本語でアナウンスしてもよいでしょう。国内で開催される国際大会では、観客のために、英語でのアナウンスの後に日本語でアナウンスすることもあります。

以下、日本テニス協会で推奨している一般的なアナウンス例を紹介します。アナウンス中の「A」または「B」は、プレーヤー名を示します。

『試合開始前のアナウンス』
「Five minutes for warm-up」プレーヤーにボールを渡し、ウォームアップを始めたら、審判台に上がる前にアナウンスします。ウォームアップ時間が5分の場合。

「Two minutes」ウォームアップ開始から3分経過後に、残り時間が2分であることをアナウンスします。

「One minute」ウォームアップ開始から4分経過後に、残り時間が1分であることをアナウンスします。このあと「Time」とアナウンスするまでの間にプレーヤーの紹介、トスの結果とどちらが何を選択したかを次のようにアナウンスします。
「This is a 2nd round match between to the Left of Chair Mr.A ; Right of Chair Mr.B. The Best of 3 tie-break sets. A won the toss and elected to serve (receive or end).」

「Time」Timeとアナウンスした後、直ちに試合を開始しますが、20秒たってもプレーヤーがベンチに座ってプレーを始めないときには「Prepare to play!」と試合開始を促します。サーバーがサービス位置についたら、「A to serve, Play!」。

「Time」の前に試合方法やトスの結果をアナウンスしていない場合には、試合開始直前に次のようにアナウンスします。
「The Best of 3(or5) Tie-break sets, A to serve, Play!」「The Best of 3(or5) Advantage sets, A to serve, Play!」「8 Games Pro-set,A to serve, Play!」

『スコアアナウンスとゲーム終了時のアナウンス』「0(Love)」、「15(Fifteen)」、「30(Thirty」、「40(Fourty)」と1ポイントごとにスコアが進み、4ポイントを先に取った方が「Game」となって1ゲームを取り、3ポイントずつ取った40-40では「Deuce」となり、2ポイント連取すれば「Game」となることは皆さんご存知でしょう。
デュースでサーバーAがポイントを取ったときには、「Advantage A」とアナウンスし、「Advantage server」とはアナウンスしません。但し、セルフジャッジの試合では、サーバーが「Advantage server」、「Advantage reciever」とアナウンスすることも多いようです。

「Game A, First Game.」プレーヤーAが第1ゲームを取ったとき。

「Game A, A leads,3-2」第1セット第5ゲームをAがとり、Aが3-2でリードしているとき。

「Game and first set, B 6-4」(第2セット開始直前に)「Second set」第1セット第10ゲームをBがとって第1セットが終了し、第2セットに入るとき。

「Game A, First Game, second set.」第2セット第1ゲームをAが取ったとき。

「Game and second set A, 6-4, 1 set all. Final set.」3セットマッチで第2セットを6-4でAが取り、第3セットに入るとき。

「Game, set and match A,[2 sets to 1],4-6,6-4,7-5」3セットマッチの最終セットをAが7-5で取り、4-6,6-4,7-5で勝ったとき。

『タイブレークのアナウンス』
「Game B, 6 all, first set, Tie-Break, A to serve.」タイブレークになったときは、このように最初のポイントのサーバーを紹介します。

「1-0(one-zero), A」「2 all」「4-2, B」タイブレーク中のスコアは、サーバーからではなく、リードしているプレーヤーのスコアからアナウンスし、そのプレーヤー名を最後にアナウンスします。タイブレークの場合、0は「love」ではなく「zero」です。

「Game and first set, B 7-6. Second set.」タイブレークが終了したときは、通常のセット終了と同様にアナウンスします。

『審判員のコール』
「Fault」"Double Fault"というコールはしません。単に、「Fault」とコールするだけです。また、ネットにかかった(ネットを越えない)ボールは「Fault」とはコールしません。

「Foot Fault」「Foot Fault」のコールは、サービスが終了した瞬間(ボールがラケットに触れた瞬間)に行います。ラインを踏んでサービスを始めても、ボールがラケットに触れる(インパクト)まではフットフォルトは成立しません。インパクト前に「フットフォルト」とコールしたら、審判員による妨害(オフィシャル・ヒンダランス)として、セカンドサーブの場合であれば、サーバーにファーストサービスを与えなければなりません。

「Net」サービスされたボールがネット、ストラップ、バンドに触れた後、レシーバーサイドへ越えたときにネットアンパイアまたはチェアアンパイアがコールします。ネットを越えずサーバーサイドに戻ったときは、「Net」とはコールしません。そのボールがサービスコート内に入ったかどうかに関係なく、コールします。

「Let」サービスレットやインプレー中にプレーを妨害する事実などが生じたとき(ポイントレット)。

「Through」ボールがネットのほころびやネットポストにピンと張られていないネットのすきまを通り抜けたとき。

「Out」ネットを越えたボールがコート外の地面に落ちるか、ノーバウンドでパーマネントフィクスチュアに触れたとき。誰もがわかるようなアウトボール、オーバーフェンスするようなアウトボールでも「Out」とコールします。そのような場合でも、コート外に着地する前に「Out」とコールしてはいけません。

「Not up」ボールをツーバウンド以上で返球したとき。ワンバウンドで打ったか、ツーバウンドで打ったか紛らわしいときにコールします。

「Foul Shot」故意にダブルヒットするなど、ルールに反してボールを打ったとき。

「Touch」ネットタッチやインプレー中のボールに身体や持ち物が触れたとき。

「Hindrance」一方のプレーヤーが他方のプレーヤーを妨害したとき、または、審判員や観客などがプレーヤーの打球を妨害したとき。

「Wait, please」または「Stop」プレー開始前に、隣のコートからのボールの侵入など、なんらかの事情でプレーの開始を止めるとき。インプレー中にボールの侵入などがあったときは、「Let」とコールしてプレーを中断します。

「Correction」フォルトまたはアウトのコールを誤りと判断したときは、直ちに「Correction」とコールして訂正します。グッドボールを「Out」と訂正する場合には、「Out」とコールする前に「Correction」とコールしません。

『コードバイオレーションのアナウンス』
最初のコードバイオレーション「Code Violation, "違反事項",Warning, Mr. A.」

2回目のコードバイオレーション「Code Violation, "違反事項",Point, Mr. A.」
このあとに新しいスコアをアナウンスします。例えば、A:Bが15-15であったとすれば「15-30」となります。

3回目のコードバイオレーション「Code Violation, "違反事項", Game, Mr. A.」
実務では、失格をアナウンスする前にレフェリーに「これこれの理由で失格させます」と説明し、レフェリーの判断も仰いでからアナウンスします。

『タイムバイオレーションのアナウンス』
最初のタイムバイオレーション「Time Violation, Warning, Mr. A」

2回目以降のタイムバイオレーション「Time Violation, Point Penalty, Mr. A」
このあとに新しいスコアをアナウンスします。例えば、A:Bが15-15であったとすれば「15-30」となります。

『けがその他のアナウンス』

【試合中のけが】
トレーナーがコートに向かっているときには、「The Trainer has been called to the court.」

トレーナーが診察を始めたら、「The Trainer is evaluating.」

トレーナーが治療を始めることをチェアアンパイアに告げたら、「Mr/Ms __ is now receiving a Medical Time-out.」

けがの治療時間が残り2分以内になったときのアナウンス。「2 minutes remaining」「1 minutes remaining」「30 seconds remaining」「Time」
以上のアナウンスは、国際試合ではなく、観客も日本人だけであれば、敢えて英語でアナウンスすることもないでしょう。

治療後、プレーヤーが30秒経ってもプレーを始めないときは、「Code Violation, Delay of Game,・・・・ Mr/Ms ___ .」

【オーバールール】
「Correction!, the ball was good.」ラインアンパイアの「Out」または「Fault」のコールをオーバールールするときに使います。チェアアンパイアが自らラインジャッジして「Out」または「Fault」とコールしたときに訂正する場合も同様です。

グッドボールをオーバールールする場合には、誰もコールして(声を出して)いませんから、単に「Out」または「Fault」とコールすればいいのです。

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