セルフジャッジのルール

私たちがプレーヤーとして参加する多くの大会は、ほとんどセルフジャッジで行われています。かつては「負け審制」(試合に負けたプレーヤーが審判する)が主流でした。真夏のぎらぎら照りつける太陽の下での負け審、真冬の風が吹きつける審判台の上での「負け審」をいやというほど経験した人も少なくないはず。
「負けてがっくりした状況で審判しても(審判されても)ろくなジャッジができる訳がない。それならいっそ「負け審」なんかいないほうがいい。」というのがセルフジャッジを採用する理由の1つとされています。

しかし、セルフジャッジでプレーしたことがあれば誰しも「イン/アウト」のトラブルをはじめ、多くのトラブルを経験し、いやな思いをしたことでしょう。また、ダブルスならともかく、シングルスで、「ボールを返すのがやっと」という状態で「イン/アウト」のジャッジなどできたものではありません。きわどいボールを「アウト」とコールし、相手プレーヤーに”むっ”とされ、お互い気まずい思いをしたこともあるはずです。

アンパイアがいないために生じるさまざまなトラブルを避ける目的で「負け審制」を復活させようとの動きもあります。今でも私たちに寄せられる質問のほとんどはセルフジャッジに関するものです。セルフジャッジの是非については、別に議論したいと考えています。

このページでは、現行のセルフジャッジ・ルールについて、トラブルの解決法も含め、解説してみたいと考えています。


この規則は、アンパイアがいない(セルフジャッジの)試合におけるトラブルを防ぐ、またはトラブルを解決するために定められており、トーナメント管理規則に基づいて開催される日本テニス協会が主催、主管、公認、後援、推奨するトーナメントにおいて、セルフジャッジを採用する大会に適用されます。

 

セルフジャッジの試合を管理する『コートレフェリー』が、2000年版「コートの友」以降、『ロービング・アンパイア(Roving Umpire)』と呼称が変更されました。
1.試合開始前のプレーヤーの義務
試合を始める前に「ネットの高さ」(ネットの中央で0.914m)を確認しておきましょう。試合中やあとでネットが少し高かった(低かった)としてもそれはプレーヤーの責任です。また、シングルスの試合では、「シングルス・スティックが立っているか」どうかも確認しましょう。「持物を落としたとき」、「隣のコートからボールなどが転がってきたとき」の処置などについては、レフェリーかロービング・アンパイアに予め確認すると共に、試合前には相手プレーヤーとも確認し合えば、余分なトラブルを避けられます。
さらに、ゲームスコアを勘違いしてトラブルとならないよう、ゲームスコアがかけるようなメモ用紙と鉛筆をアンパイアズチェアかベンチに置いておくのもよいでしょう。
2. 試合中のジャッジ
(1) ボールのイン/アウトの判定
ネットより自分の側のボールのイン/アウトは、すべて自分(またはパートナー)が行います。相手コートのイン/アウトについては、どんなに不服でも判定する権利がありません。「アウト」(「フォールト」)とコールできなかったボールは、すべてグッドとみなされます。
ボールが「アウト」(「フォールト」)であったとしても、次の場合には無効とされ、グッドと見なされます。着地したら直ちに判定するのが原則です。
a) アウト(フォールト)ボールを返球し、相手コートでアウトになる(またはネットする)までに「アウト」(「フォールト」)のコールをしなかった場合。
b) アウト(フォールト)ボールを返球し、相手がそのボールを打つまでに「アウト」(「フォールト」)のコールをしなかった場合。(2)ボールマーク調査(Ball Mark Inspection)
クレーコートであってもセルフジャッジの試合ではボールマーク調査は行えません。ボールマーク調査ができるのは、チェアアンパイアがついている試合だけです。チェアアンパイアが客観的な立場から、ボールが『入った/入らない』を判定するためです。
客観的な事実認定の判定者がいないセルフジャッジの試合ではボールマーク調査を要求できません。

(3)ジャッジの方法
「アウト」(「フォールト」)のコールは、直ちに、大きな声と明確なハンドシグナル(片方の手をアウト(フォールト)した方へ指し示す)で行わなければなりません。

「アウト(フォールト)」とコールした後、グッドに訂正した場合、そのプレーヤーは失点することになります。「アウト(フォールト)」とコールした後、「今のは入ってました」といいながらラリーを続けることはできません。

ダブルスのときは、ペアのいずれか一方が「アウト(フォールト)」とコールし、ハンドシグナルをすればいいのですが、ペアの一方が「アウト」(「フォールト」)とコールしたが、パートナーが「グッド」とした場合にもそのペアは失点することになります。(2004年改正点

ダブルスで、一方が「フォールト」とコールしたが、パートナーが「レット」とコールした場合には「レット」となります。パートナー同士で「アウト」と「グッド」の食い違いになったことと同様に、パートナー同士で判定が食い違ったときは、常に「相手に有利な判定が優先する」と考えればよいでしょう。

(4)スコアアナウンス
これもセルフジャッジでトラブルとなる要因の1つです。
新しいポイントが始まる前、新しいゲーム(セット)に入るときには、必ずサーバーがレシーバーに聞こえるような大きな声で、スコアをアナウンスしなければなりません。スコアアナウンスはサーバーの義務です。
レシーバーも、サーバーのスコアアナウンスに対して、うなずくなど、応答する義務があります。レシーバーがサーバーのスコアアナウンスに対し、応答せず、サービスを返球する構えに入ったら、サーバーのスコアアナウンスを認めたものとみなされます(そのスコアアナウンスがレシーバーに聞き取れなかったとしても)。

サーバーがスコアアナウンスしない場合には、「スコアアナウンスをしてください」と要求することができます。それでもしないようなときに、レシーバーが確認の意味でスコアアナウンスをしても問題ありません。
ポイントごとにスコアを確認しておけば「途中でスコアがわからなくなった」ということはなくなるでしょう。

ゲーム(セット)スコアアナウンスは、アンパイアがついている試合と異なり、セルフジャッジでは、ゲームスコアをサーバー側から「3-4」などとアナウンスすることもありますが、決して間違ったアナウンスではありません。自分が3-4と負けているときに「4-3」とアナウンスするような場合には、必ず相手がリードしていることも付け加えなくてはいけません(「4-3,相手プレーヤー名 leads」)。

(5)スコアがわからなくなったときの処置
ポイントスコアでもゲームスコアでも、スコアがわからなくなったときは、双方のプレーヤーが合意できるところまで逆上り、合意できたそのスコア以降、取得したことが確実なスコアを加えてやり直す、のが原則です。

(6)サービスレットの取り扱い
 a)サーバーまたはそのパートナーが「レット」とコールしたが、無視されてインプレーとなり、ポイントが終了したときは、そのポイントは有効なものとなります。
 b)サーバーの「レット」のコールによってプレーを止めたときは、「レット」をコールしたサーバーが失点します。
 c)レシーバーがサーバーの「レット」のコールに同意したときは、「サービスレット」とします。

(7)ボールの侵入など妨害があったとき
ボールが侵入してくるなどの妨害があったときは、アンパイアがついている試合と異なり、プレーヤーが「レット」とコールできる。

(8)持物を落としたとき
持ち物を落としてレットにしたときは、ロービング・アンパイアを呼んで確認してから次の処置をとる。
1回目  :「次に落としたら失点になる」旨、相手プレーヤーに警告する。
2回目以降:持物を落とす度に失点になる(ダブルスのときはパートナーでも)。

セルフジャッジの試合では、持ち物を落としたり、隣コートからボールが入ってきてもそのままプレーを続けることがよくあります。両プレーヤーがそれらを妨害と感じることなくプレーが続くようならそれも有効とすべきでしょう。
ポイントが決まってから「妨害」を主張することはできません。また、都合のいいときだけ「レット」や持ち物を落としたから「失点だ」などと主張することもできません。
ルールは公平を保つためにあります。妨害による「レット」や「失点」を適用する場合には、その旨、相手プレーヤーに事前に確認してからプレーすることもトラブルを防ぐコツです。

3. コートを離れたいとき
(1)試合中、トイレなどでコートを離れるときは、まず、相手にその理由を説明し、同意を得ましょう。
(2)相手が同意しない場合は、レフェリー(またはロービング・アンパイア)を呼び、許可を得てコートを離れることができます。
4. 携帯電話の持ち込み
携帯電話やモバイルをバッグに入れてコート内に持ち込むときは,電源をOFFにしなければいけません(バイブレーションモードにするだけでもいけません)。電源を入れたまま持ち込むと「コーチング」を受けていると見なされます(直接、電話で会話をしなくても)。
5.レフェリーを呼ぶとき
プレーヤー同士で解決できないようなトラブルが発生した場合、いずれのプレーヤーもレフェリー(またはロービング・アンパイア)を呼ぶことができます。
但し、ボールのイン/アウトでトラブルになった場合には、レフェリーを呼んでも解決できません。プレーヤー同士で解決するしかありません。
6.ロービング・アンパイア
セルフジャッジの大会では、レフェリーの他、少なくとも4面に1名程度のロービング・アンパイアが必要とされています。
ロービング・アンパイアは、必要に応じ、プレーヤーのセルフジャッジに対し、オーバールールをしたり、倫理規程違反を行っているプレーヤーに対し、罰則を課したりして試合をスムーズに進行させることがレフェリーから権限委譲されています。

ロービング・アンパイアの任務の詳細については、ロービング・アンパイアマニュアルを参照して下さい。
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